ヴァローナ/アラグアニ使用した新作お菓子考案中

Poche du reve 新作Gateau

現在、ベネズエラ産のカカオのみを使用したVALRHONA 社のアラグアニ(72%)を用いた新商品を考案中!
私が新商品を考える際に大切にしている考え方を踏まえながらご紹介したいと思います。


”アラグアニ”ってどんなチョコレート??

カカオ分72% ベネズエラ産カカオ豆のみを使用した、香り高い味わい。力強い苦みの中にレーズンやマロンの深みのある香りと、レグリス(甘草)のようなアロマのバランス良い風味が特徴。

VALRHONA

新商品を生み出す時、大切にしていること。

(1)何が主役のケーキなのか、必ず”主人公”をつくる。

ケーキを食べたときに、複雑すぎて何が主役のケーキなのか分からない…なんてことが無いようにシンプルな味構成にしています。主材料に足す味は、2、3種類。主役を引き立てるペアリングを考えています。

現在、考案中のケーキの場合の主役は”アラグアニ”
このチョコレートを最大限に味わっていただくためのペアリングを考えました。

(2)香りを大切にする。

お菓子は、”香り”が大切。美味しいと思うものには必ず香りが存在します。香りが味わいを強める。
鼻が詰まっていて香り(匂い)を感じにくいときなど、味が分からないと思ったことはありませんか?
人間の嗅覚は、味覚と深い関係があります。

私たちの嗅覚には、「二つの経路」1が存在しているそうです。
ひとつめは、鼻先から入ってくるにおいを感じる経路=「オルソネーザル(たち香)」。
ふたつめは、食物などを口に入れたあと、鼻に抜けていくにおいを感じる経路=「レトロネーザル(あと香)」
後者は、人間にしか無い嗅覚能力です。私たちは、口に食物を入れて舌で味わうだけでは、おいしさを感じることはできません。ワインやお酒もこのレトロネーザルが備わっているからこそ楽しめると言っても過言では無いです。

レトロネーザルの役割を、”鼻をつまんで食べ物を食べる”ことで簡単に体験できます。
鼻をつまんでチョコレートをひとかけら食べてみてください。ネットリした口当たりと甘さは感じるものの、香りがないと全く美味しさは感じないです。
「あれ??チョコレートってこんなにも味気ないものだった?どのチョコレートを食べても全く味わいがない…」
鼻をつまむのをやめると、呼気(吐き出す息)とともに風味が広がり、甘みも味も格段に増します。
チョコレートの産地やカカオ分の違いもこのレトロネーザルがあるからこそ分かるんだなと実感します。

では、どのように”香り”を大切にしているか。
リキュール類、香辛料(バニラ、アニス、シナモンなど)を加えることで香り付けします。もちろん素材そのものが持っている香りを引き立てるもので無ければいけません。
例えば、コーヒーのお菓子には、ブランデーやヘーゼルナッツ。リンゴのお菓子には、シナモン、バニラ、カルヴァドスなど。

私は、フードペアリングを考えるときまず最初にメイン(主人公)を味わいその余韻が口の中に残っている状態で合わせたい食材、香りを口に含み”素材×素材”がどのように変化するか自分の味覚と嗅覚で決めることが多いです。

アラグアニのケーキでは、オレンジの香りとグリオットチェリーの食感、香りを足しています。オレンジは生地の中に混ぜ込み、グリオットチェリーはバターとお砂糖でソテーしたあとバーディネチェリーブランデーで香り付けしてガナッシュに加えています。

もちろん仕込み時に、いくらよい香りを纏わせても保存期間が長すぎて香りが飛んでしまっては意味ないです。日本は、保存技術が発達して長期間の保存は可能になりましたが、やはり出来たてのものと比べると香りは劣ります。

(3)食感。味の移り変わりなど最後まで飽きない工夫。

ざくざくした食感(ナッツやフィヤンティーヌなど)を加えたり、フルーツの果肉感をムースの中に残したり、最後まで飽きない工夫をしています。
いくら美味しいものでも、無限に食べれないですし、単調な味わいだと飽きてしまいますよね。。。

今回のアラグアニの場合、チェリーの果肉感と周りのコーティングチョコレート、その中に含まれるアーモンドが食感のポイント。と、お伝えしたのですが………

コーティングショコラの風味とアーモンドが強すぎてアラグアニの香りが弱くなってしまうため、上面の仕上げをグラサージュ(艶やかなチョコレートソース)に変更しました。
仕上げを変更したことで、ケーキ全体の一体感が生まれアラグアニの香りとともにフルーティー感も増したように感じます!

(4)ケーキ全体のまとまり。(ビジュアルも含む)

■ひとつひとつの素材の重要性

美味しいけど、一つのケーキを完食したとき胃もたれするような重さがあるケーキは店頭には並べません。食べた後に、「食べなきゃ良かった…」と、罪悪感が残るようなケーキは出したくない。
ケーキやお菓子は、心を満たすものでお腹を満たすものでは無いと個人的に考えているからです。

また、ひとつひとつの素材が重要なパーツになっているかどうか。それぞれの味わいが主役を引き立てつつ、一体感があるかどうかも重要なポイントです。

ケーキを食べていて、どうしてこの素材を入れたのかなミスマッチだなと感じたことは無いですか。私自身、ケーキを食べたとき、この酸味が無ければ美味しいのに、この素材が主張しすぎだな…、土台が固くて上のムースと一緒に味わえないなと思うことがあります。

■ケーキのデコレーション(飾り付け)

お客様は、見た目でしかケーキを選べないのでケーキの仕上げのデザインも、とても重要だと思っています。視覚的に見たときに、土台と関連性のあるデコレーションになっているかどうか。あと、口にして大丈夫なものか。飾り付けでバニラの鞘がケーキに添えてあったりするのを見ると、これ食べれないのになぁ…と心の中で思ってしまいます。

また、最近はお客様ご自身で写真を撮って、Instagramなどに投稿されるので見栄えの良い飾り付けを意識しています。

  1. 参考文献:著者 和田有史「おいしさ」を感じるしくみ~匂い、味、呼吸のマリアージュ~後編 https://news.mynavi.jp/techpluhttps://news.mynavi.jp/techplus/article/food_science-2/s/article/food_science-2/ 2022/05/27 
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